平田一式飾りの約束
平田一式飾りには、古くから大切にされてきた「約束」があります。それは制約ではなく、
見立ての面白さを生み出すための工夫でもあります。
― 受け継がれてきた工夫と見立ての文化 ―
平田一式飾りは、身近な生活道具を使い、それらを別のものに見立てて作品を作る民俗芸術です。
そこには、道具の形や質感を生かして工夫する面白さと、「神遊び」ともいえる自由で豊かな精神があります。
こうした考え方を土台に、平田一式飾りには、地域の中で大切に受け継がれてきた制作上の約束があります。
「一式」を守ること
一式飾りで最も大切にされてきたのは、「一式」を守ることです。
たとえば、茶道具一式であれば茶道具だけで、陶器一式であれば陶器だけで作品を構成します。
高橋教授も、一式飾りを「生活道具一式を見立てた作品」と述べられており、
材料に制約があること自体が、この文化の特徴の一つであることが分かります。
平田では、もともと奉納飾りを飾る「飾宿」の商売品や、その家にある道具類を用いて作品が
作られてきたと伝えられています。限られた種類の道具の中で、
何をどのように表すかを工夫することに、一式飾りならではの面白さがあります。
素材そのものを生かすこと
平田一式飾りでは、使う素材そのものに手を加えず、その形や質感を生かして
用いることが大切にされてきました。
色を塗ったり、割ったり、削ったりして形を変えるのではなく、
もとの道具の姿をそのまま使いながら作品を作ります。
これは、一式飾りがもともと祭礼の奉納飾りであり、
飾り終えた後には再び生活道具や商売道具として用いることを前提としていたためです。
道具を道具のまま生かすこともまた、この文化の大切な特色です。
「見立て」があること
平田一式飾りの魅力の中心にあるのが、「見立て」です。
高橋教授は、一式飾りを「見立て」の趣向を楽しむ文化であると述べられています。
身近な道具を、そのまま別のものに見せる工夫こそが、一式飾りの真価です。
たとえば、急須が人の顔に見えたり、茶臼が米俵に見えたりするように、
見慣れた道具が思いがけない姿に変わるところに面白さがあります。
限られた道具だけを使いながら、何をどう見立てるか。
そこに作り手の工夫と遊び心が表れます。
-約束の中にある自由-
一式飾りは、何でも自由に作る造形ではありません。
材料には制約があり、その制約の中で工夫を凝らし、見立ての妙を生み出すところに、
この文化の深い魅力があります。
高橋教授も、平田一式飾りの継承には、見栄えだけではなく
「見立て」の面白さを見直すことが大切だと述べられています。
平田一式飾りは、こうした約束の中で、信仰の心と創意工夫を重ねながら
受け継がれてきました。道具を生かし、見立てを楽しみ、神を迎える。
そこに、この民俗芸術ならではの豊かさがあります。
